今回はタイトルの通り、GDが先か、精神疾患が先か、またそこにIQが関係しているのかという内容です。
この記事を書こうと思った理由は、Xを見ていると、特殊な人が多いと感じるからです。
序論
性別違和(Gender Dysphoria、以下GD)は、個人の性別アイデンティティと出生時に割り当てられた生物学的性別が一致しないことによって生じる心理的苦痛を特徴とする状態である。
この状態は、DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)において精神疾患として分類されるが、その診断や治療は社会的、文化的、医学的な議論の中心にある。
GDを持つ人々は、うつ病、不安障害、物質使用障害、自殺念慮などの他の精神疾患との併発率が高いことが報告されており、この関連性は臨床心理学や精神医学において重要な研究課題となっている。
さらに、過去にはGDと知能指数(IQ)の関連性が議論されてきたが、科学的根拠は限定的であり、明確な結論には至っていない。
本論文の目的は、以下の3つの問いを軸に、GDと他の精神疾患の併発率、発症順序、IQとの関連性を詳細に分析することである:
分析は、2025年6月時点の最新の研究データに基づき、科学的根拠を重視した論文形式で記述する。
1. GDと他の精神疾患の併発率
1.1 併発率の科学的データ
GDを持つ人々における精神疾患の併発率は、一般人口と比較して顕著に高いことが多くの研究で報告されている。
系統的レビューによると、GDを持つ人々の53.2%から77%が生涯で少なくとも1つの精神疾患を経験している。
具体的な併発疾患の割合は以下の通りである:
これに対し、一般人口における精神疾患の有病率は、世界保健機関(WHO)のデータによると年間約12.5%(約9.7億人)、米国国立精神衛生研究所(NIMH)では23.1%(約5930万人)とされている。
生涯有病率では、一般人口の約29.1%が何らかの精神疾患を経験すると推定されている(NIMH)。
この比較から、GDを持つ人々の精神疾患併発率は一般人口の2.3倍から6.2倍高いことが明らかである。
1.2 併発疾患の詳細と特徴
GDを持つ人々で最も一般的な併発疾患はうつ病であり、64.5%という高い割合で診断されている。
これは、ジェンダーアイデンティティの不一致による慢性的な心理的ストレスや、社会的スティグマが自己否定感を増幅し、うつ症状を悪化させるためと考えられる。
不安障害(25.9%)も頻繁に観察され、特に社会的状況での不安や身体的外見への不満が関与している。
物質使用障害(40.2%)は、ストレスや孤立感への対処手段としてアルコールや薬物に依存するケースが多い。
自殺念慮の割合が42.9%と極めて高いことは、GDを持つ人々が直面する心理的負担の深刻さを示している。
興味深いことに、GDと併発する精神疾患の種類は、個人の社会的背景や診断時期によって異なる。
例えば、若年層では不安障害や自傷行為が顕著であり、成人期では物質使用障害やパーソナリティ障害の割合が増加する傾向がある。
また、性別適合手術やホルモン療法を受けた後、精神疾患の症状が軽減する場合もあるが、完全な解消には至らないケースも多い。
1.3 社会的要因と少数派ストレス
GDと精神疾患の高い併発率は、生物学的要因だけでなく、社会的要因に大きく影響されている。
少数派ストレスモデル(Minority Stress Model)によれば、トランスジェンダーやジェンダー不適合者は、社会的スティグマ、差別、被害経験により慢性的なストレスにさらされる。
これが、うつ病、不安障害、自殺念慮のリスクを増大させる。
例えば、家族からの拒絶、職場や学校での差別、医療アクセスへの障壁は、GDを持つ人々の精神健康に深刻な影響を及ぼす。
COVID-19パンデミックは、精神健康問題をさらに悪化させた。
WHOの報告では、パンデミックにより不安障害が26%、うつ病が28%増加したとされており、GDを持つ人々は特に影響を受けやすい集団であると考えられる。
社会的孤立や医療アクセスの制限が、GD患者の精神疾患リスクを増大させた可能性がある。
1.4 比較分析
以下の表に、GDを持つ人々と一般人口の精神疾患有病率を比較する:
この表から、GDを持つ人々の精神疾患併発率が一般人口を大きく上回ることがわかる。
特に、生涯有病率(GD: 53.2% - 77%、一般人口: 29.1%)の差は、GD特有の心理的・社会的ストレスが精神疾患のリスクを増大させていることを示唆している。
2. GDと精神疾患の発症順序
2.1 GDが先行する場合
GDと精神疾患の因果関係や発症順序は、個人差が大きく複雑であるが、多くの研究はGDが先に発症し、その結果として生じるストレスが精神疾患を引き起こすパターンを支持している。
GDはしばしば幼少期から存在し、ジェンダーアイデンティティと身体的性別の不一致による心理的苦痛が、うつ病や不安障害の発症を誘発する。
例えば、NHSの説明では、GDによる不一致感が強烈な場合、慢性的なストレスが精神疾患につながるとされている。
また、アメリカ精神医学会は、家族や社会からの拒絶が精神健康問題の強い予測因子であると指摘している。
研究では、GDを持つ若者の77%が精神疾患の診断を受けているのに対し、一般人口では37.8%である。
この差は、GDに伴う社会的ストレスが二次的に精神疾患を引き起こす可能性を示している。
2.2 精神疾患が先行する場合
一方で、精神疾患が先に発症し、それがGDの発症に影響を与えるケースも存在する。
一部の研究では、幼少期のトラウマ、虐待、または既存の精神疾患がGDの発症に関連している可能性が示唆されている。
特に、自閉スペクトラム症(ASD)とGDの併発率が高いことが報告されており(StatPearls, NCBI, 2023)、ASDがGDの発症に影響を与える可能性がある(PubMed: 29503778)。
例えば、ASDを持つ人々はジェンダー規範に対する感受性が異なる場合があり、これがGDの症状を増幅する可能性がある。
2.3 双方向的な関係と同時発症
GDと精神疾患の関係は一方向的ではなく、双方向的な相互作用が存在する可能性が高い。
ある研究では、ジェンダー関連の青少年(GR)と精神健康関連の青少年(MHR)の精神症状が比較可能であると報告されているが、発症順序については明確な結論が出ていない。
この研究では、GR青少年はMHR青少年と比較して自殺念慮が多く、アルコール乱用や摂食障害の症状が少ないとされているが、どちらが先に発症するかは特定されていない。
3. GDとIQの関係
3.1 最新の研究結果
GDとIQの関連性については、最新の研究では明確な差異が見られない。2022年の研究では、GDを持つ72人の若者(トランスボーイ45人、トランスガール27人)の平均IQが100.29(標準偏差15.07)であり、一般人口の平均IQ(100)とほぼ一致することが報告されている。
この研究では、IQはWISCまたはWAISを用いて測定され、教育成果(職業教育51.4%、高等職業/学術教育48.6%)との関連性も一般人口と同様であることが確認された。
この結果は、GDがIQに特異的な影響を及ぼさないことを示唆している。GDを持つ人々のIQは、一般人口と同等の範囲に分布し、特異的に高いまたは低い傾向はない。
3.2 過去の研究とその限界
一方で、過去の研究では異なる結果が報告されたこともある。
2010年の研究では、特定のタイプの男性から女性へのトランスジェンダー(オートガイネフィリック型、AGP)の平均IQが121.7(n=42)、ホモセクシャル型(HSTS)のIQが107.3(調整後98.6)と報告されている(Smarter Than The Average Bear, 2010)。
AGPタイプの高いIQは、効果サイズd=0.96で統計的に有意であった。
しかし、この結果は自己選択バイアスによる可能性が高いと批判されている。
トランスジェンダーへの移行には経済的・社会的コストが伴うため、高い知能を持つ人が選択的に移行した結果と考えられる。
この研究の限界として、サンプルサイズの小ささ(n=42および39)、診断基準の曖昧さ(DSM-IV以前の分類)、データの古さが挙げられる。
3.3 ホルモン療法と認知機能
GDを持つ人々の認知能力については、性別適合ホルモン療法が特定の認知機能に影響を与える可能性が示唆されている。
2021年の系統的レビューでは、ホルモン療法が視空間能力(出生時に女性と割り当てられたトランスジェンダーで向上)、言語作業記憶(出生時に男性と割り当てられたトランスジェンダーで向上)に改善をもたらす可能性があるが、IQ全体のスコアに直接的な影響を及ぼす証拠は乏しい。
これらの変化は、ホルモン療法が心理的ストレスを軽減し、間接的に認知パフォーマンスを向上させる可能性があることを示唆している。
3.4 知的障害との関連
GDと知的障害(IQが70以下)の共存が一部のケースで報告されているが、これはGDがIQに直接的な影響を与えることを意味しない。知的障害を持つGD患者では、診断や支援の提供が複雑になることが指摘されているが、GDそのものが知的障害を引き起こす証拠はない。
3.5 IQに関する理論的考察
GDとIQの関係は、精神疾患の併発率や社会的ストレスに比べ、臨床的に重要な要因ではない可能性が高い。
過去の研究で報告された高いIQの傾向は、自己選択バイアスや診断基準の時代的制約によるものであり、最近の研究では支持されていない。
GDとIQの関連性を検討する際には、社会的要因やホルモン療法の影響を考慮する必要があるが、現在の科学的証拠では、GDがIQに直接的な影響を及ぼすとは考えにくい。
結論
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併発率: GDを持つ人々の精神疾患併発率は53.2%から77%であり、一般人口(年間12.5%~23.1%、生涯29.1%)に比べて2.3倍から6.2倍高い。うつ病、不安障害、物質使用障害、自殺念慮が特に顕著であり、社会的スティグマや少数派ストレスが主要な要因と考えられる。
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発症順序: GDが先に発症し、そのストレスが精神疾患を引き起こすケースが多いが、幼少期のトラウマや既存の精神疾患(例:ASD)がGDの発症に影響を与えるケースも存在する。両者の関係は双方向的で、個人差が大きい。
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IQとの関連: GDとIQの間に明確な関連性は見られず、GDを持つ人々のIQは一般人口と同等の範囲(平均100.29)に分布する。過去の研究で報告された高いIQの傾向は、自己選択バイアスによる可能性が高く、最近の研究では支持されていない。
これらの結果から、GDと精神疾患の関連性は主に社会的要因や心理的ストレスに起因しており、IQがこの関係に直接的な影響を与えている可能性は低いと考えられる。
ただし、研究の限界として、GDに関するデータは医療機関を受診する人々に偏りがちであり、全体のトランスジェンダー人口を完全に反映していない可能性がある。
また、発症順序の特定には、診断タイミングやサンプルバイアスの問題が影響している。
あとがき(本記事を書いた動機など)はnoteで
