「恋をすると女の子はきれいになる」
それはあまりにもよくできた嘘だ。
化粧品のCM、恋愛ドラマ、少女漫画、Twitter
どこもかしこも、恋さえしていれば自然と肌がつやめいて、
髪は風になびき、目はうるんで輝きだすような幻想をばらまいている。
自分磨き?努力?
ただ“好きな人ができた”というその一点で、
女の子は魔法のように美しくなるのだと。
現実はそんなに甘くない。
恋をしただけでかわいくなるなら、
私はとっくに誰かの視線を惹きつけていたはずだ。
私は、恋をした。
同じクラスの、ある人。
だから、私も「かわいくなりたい」と願った。
鏡の前で、何度も何度も。
ビューラーでまつ毛を上げ、ハイライトを丁寧に仕込んだ。
だけど現実は残酷だった。
いくらメイクを頑張って、周囲が少し優しくなっても、
肝心のその人の目は私を通りすぎていくだけだった。
見てほしかったのは、あの人だったのに。
それでも私は、諦めなかった。
なぜなら私は「恋をするとかわいくなる」とは信じていなかったから。
恋は魔法なんかじゃない。
思うだけじゃ、誰も振り向いてくれない。
だから私は、決断した。
整形をしよう。
恋は整形を決断してくれる魔法だったのだ。
目の形、鼻の高さ、輪郭のライン。
どれも“ちょっと”を変えるだけで、驚くほど印象は変わる。
痛みと腫れに耐えて、鏡の中の顔をじっと見つめた。
そこには、昨日までの“私”とは少し違う顔があった。
まるで他人みたい。でも、私だった。
変わっていく顔に、最初は戸惑いもあった。
けれど、その顔を見て「かわいくなったね」と言ってくれる人が少しずつ増えた。
私はその言葉に救われた。
好きな服を着て街を歩くと、すれ違う人の視線を感じることもあった。
確かに、私は前より“かわいく”なった。
でもあの人だけは、私に気づかないままだった。
私がどれだけ変わっても、どれだけ整形しても。
私は自分を変えた。
でも、世界は変わらなかった。
自分に自信を持ちたくて、少しでも彼に近づきたくて、ここまで来たのに。
恋をして、願って、整形して、努力して、痛みに耐えて、笑顔を作って。
それでも、その人は私を「恋愛対象」として見てくれなかった。
それなのに、街には今日も「恋すれば、かわいくなれる」なんて言葉が踊っている。
ふざけてる。かわいくなりたかったら、人は整形するんだよ。
貯金を切り崩して、ダウンタイムを隠して過ごして、
やっと“かわいい”のスタートラインに立てるんだよ。
恋心が顔を変えるなんて、そんな都合のいい奇跡、どこにもない。
でもね、それでも。
私はこの選択を後悔していない。
整形してよかったと思ってる。
前は“嫌い”だった自分の顔を、
今は“工夫して育てていく存在”だと思えるようになった。
誰かに「かわいい」と言われたとき、それを否定せずに受け取れるようになった。
それはたぶん大きな進歩だ。
でも恋だけは、変わらなかった。
恋って不思議だ。
誰かを好きになるだけで、こんなにも必死になれる。
でも、その必死さが報われるとは限らない。
むしろ、努力すればするほど、空回りしていく気がする。
それでも、私はまだ、あの人の横顔を目で追ってしまう。
そしてふと、思ってしまう。
あとどれだけ整形してかわいくなれたら、今度こそ振り向いてくれるだろうか
