
Youtube始めました→https://www.youtube.com/@MTF-gi1ef
X(旧Twitter)に何気なくこんな投稿をした。
性同一性障害の診断を受ける
— まるまる@MTF日記 (@maru2blog) 2026年9月9日
↓
性別適合手術を保険診療で受ける
↓
戸籍の性別を変更する
↓
身分証を更新する
↓
ホルモン治療を開始する
ネタに見えるけど手術を「保険」で受けるならこうなる
自費でホルモン治療→手術だと「混合診療」扱いで手術まで全額自己負担になる制度のバグ
まあこれは本当は手術を受けた後、すぐホルモン治療できるんだけどね
— まるまる@MTF日記 (@maru2blog) 2026年9月9日
でも声の女性化手術は、戸籍の変更をしてからじゃないと保険診療で受けれない。
これもバグ
性同一性障害の診断を受ける
↓
性別適合手術を保険診療で受ける
↓
戸籍の性別を変更する
↓
声の女性化手術を保険診療で受ける
このポストを見た一般の人は、おそらく「順番が逆でしょ」「ネタツイ乙」と思ったはずだ。
トランスジェンダー当事者でも、そうでなくても、詳しくない人であっても、なんとなくの常識として「まずホルモン治療で徐々に身体を慣らしていって、女性としての生活を始めてから、最後のステップとして手術をするんだろう」くらいの想像はつくからだ。
だが、日本の医療保険制度のルールを真面目に守り、国が定めた正規ルートで「保険適用」の手術を受けようとすると、法と制度のパズル上、このグロテスクな順番を踏むしかなくなる。
冷静に考えてみてほしい。これ、どれだけ狂っているか分かるだろうか。
「混合診療の禁止」という名の、あまりにも冷酷なトラップ
なぜこんな怪談のようなチャートが完成してしまうのか。原因は、日本の医療制度が後生大事に守り続けている「混合診療の禁止」という大原則にある。
簡単に言えば、ひとつの治療プロセスの中で「保険が適用される治療」と「保険がきかない自費(自由診療)の治療」を混ぜてはいけないというルールだ。もし混ぜた場合、本来なら3割負担で済むはずの保険診療の部分まで、すべてペナルティとして10割負担(全額自腹)に跳ね上がる。
そして現在、この国におけるトランスジェンダー医療の歪な位置づけは以下の通りだ。
-
性別適合手術(SRS): 条件を満たせば「保険適用」(3割負担)
-
ホルモン治療: 原則として「自費診療」(10割負担)(戸籍変更前)
この2つの事実を組み合わせると、バグが発生する。
お金がない当事者が、「毎月数千円で済むホルモン治療から始めて、少しずつお金を貯めて、数年後に保険で手術を受けよう」と考えたとしよう。当たり前の、極めて(トランスジェンダーにとって)自然な人生設計だ。
しかし、いざ手術を受けようと大学病院などの門を叩いた瞬間、制度はこう告げてくる。
あ、あなた過去に自費でホルモン治療を受けていますね?
それは一連の治療とみなされるので、ここで手術に保険を使うと『混合診療』になります。
したがって、手術費用もすべて自費で払ってください
つまり、手術代を3割負担に抑えたければ、「過去に一度も自費のホルモン治療を受けていない純粋な身体」でなければならない。
言い換えるなら、「男性ホルモンが体中を巡り、筋肉質で、声も低く、体毛も濃い、身体的にはどこからどう見ても男性のまま手術台に上がって、下半身だけを先に切り落とせ」と制度が要求しているのだ。
医療倫理とは一体何なのだろうか。
本来、ホルモン治療は単に外見を変えるだけでなく、不可逆な手術に踏み切る前に、新しいホルモン環境に心身が耐えられるかを慎重に見極めるためのステップでもあるはずだ。それを「保険で安く受けたいなら、段階を踏むな。いきなり身体を不可逆に作り変えろ」と突きつけてくる。
声の手術に見る、さらなる倒錯と役所の茶番
しかし、この国の制度が抱えるバグは、下半身の手術だけでは終わらない。
「声の女性化手術」は別の角度から同じようなことが起きている。
トランス女性にとって、「声」は社会生活における最大の急所だ。
どれだけ時間とお金をかけてメイクを極め、完璧に女性の服を着こなし、立ち居振る舞いを身につけたところで、口を開いた瞬間に低音ボイスが響けば一瞬ですべてが崩壊する。
買い物ひとつ、会社の電話対応ひとつで「えっ?」と二度見され、嘲笑や奇異の目に晒される。
だからこそ、喉の手術を望む当事者は多い。
そして、声帯を短縮したりする声の手術も、建前上は保険適用の対象になっている。
だが、その保険を適用するための条件は
「戸籍の性別が、すでに女性に変更されていること」
声の手術というのは、女性として社会に溶け込み、安全に生活するために受けるものではないのか。
一番声に怯え、精神を削られている「移行期」にこそ必要な治療ではないのか。
それなのに、国は平然とこう言うのだ。
「まず戸籍を女に変えてこい。話はそれからだ」
戸籍を変えるためには、性別適合手術を受けて、家庭裁判所に行って手続きをしなければならない。
つまり、過激に書くと、
声が完全に男性のまま家裁の待合室に座り、書記官や審判官の前で低い地声を使って「性別を女性に変更したいです」と陳述し、戸籍謄本が「女」に書き換わったのを確認してから、ようやく耳鼻咽喉科に行って「女になったので、保険で声を高くしてください」と頭を下げる。
この茶番を、一体どんな顔をして演じろというのだろうか。
ちなみにホルモン治療も戸籍変えたら、保険適用になるところが多いよ()
完成した、狂気の「オール保険適用RTA」
これらのバグと制約をすべて繋ぎ合わせ、一円も余計な金を払わずに女性へと移行するための「理論上の最適化チャート」を描くと、こうなる。
性同一性障害の診断を受ける
↓
ホルモンは絶対に打たず、性別適合手術を保険で受ける
↓
男声のまま家庭裁判所に出頭して戸籍を変える
↓
戸籍が女になったので、声の女性化手術を保険で受ける
↓
ようやく保険でホルモン治療を開始する
これが、日本の医療制度が導き出した「正解」だ。
完璧に制度の穴を縫った、高難易度死にゲーのRTA。
だが、こんなルートを正気で完走できる人間がこの世に存在すると思うだろうか。
すべてが終わってからようやくホルモンを打ち始める。
大体が途中で精神が崩壊するか、社会的に孤立して死ぬかの二択だ。
実際、こんな狂気のチャートに付き合っていられる当事者など現実にはほぼ存在しない。
保険適応で手術を受けている人は、何らかの理由でホルモン治療ができなから、できている人がほとんどだろう。
みんな一刻も早く苦痛から逃れたいから、制度の利用を諦める。
数百万円の借金を背負い、身を粉にして働き、自費でホルモンを買い、言葉も通じないタイの病院へ飛んで手術を受けるか、これまた長い手続きを踏む国内の病院に駆け込むのだ。
「やってる感」の陰で搾取される命
厚生労働省の官僚や政治家たちは、きっと満足しているのだろう。
「性別適合手術も声の手術も、我が国は保険適用にしました」
「LGBTに配慮した先進的な医療体制を整えました」と、綺麗に整えられた報告書を掲げて、胸を張っているに違いない。
だが実態は、他の法律や保険の基本原則(混合診療の禁止)とのすり合わせを完全に怠ったまま、ただパッチワークのように表面だけ制度を貼り付けただけだ。
その結果、誰も渡れない「見せかけの橋」が架けられ、当事者はその橋を渡れずに、自費という名の激流に身銭を切って飛び込み続けている。










