MTF日記/大学院生

MTF当事者(戸変済)の日記

 

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【MTF】「手術後の鬱」は性別適合手術のせいではなく、人生がそもそもハードモードだからという話【トランスジェンダー】

 

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こんにちは。まるまるです。

最近Xで、こんな投稿を見かけました。

「睾丸摘出する方のブログやX、YouTubeを一通り見たんだけど、ほとんどの方が取った後鬱病になっていたり更新が途絶えてる。それが『答え』なんだと思う」

これ、たぶん結構多くの人が「たしかに……」って思うやつです。
外から見たら、そう見えるのもわかる。
更新が止まってる。消えてる。元気そうじゃない。
じゃあ「やっぱり手術なんてしない方がいいんだ」「後悔する人が多いんだ」って結論にしたくなる気持ちもわかる。

でも、当事者としてははっきり言いたいです。

それ、見えてる範囲だけで“答え”を決めすぎ
しかもたぶん、一番大事なところを見落としてる。

今日はその話をします。

 

トランス当事者のブログやXやYouTubeが止まる理由って、別に鬱とか後悔だけじゃないんですよ。

むしろかなりの割合で、理由はもっとシンプルです。

もう“トランスであること”を毎日発信しなくてよくなったから。

ホルモン治療を始めたばかりの頃。
手術前後。
戸籍変更の時期。
このへんって、人生の中でも特に変化が大きい。
だから発信も増える。記録にもなるし、同じ立場の人の参考にもなるから。

でも、その山場を越えて生活が落ち着いたらどうなるか。

普通に仕事して、普通に暮らして、普通に日常を回すようになる。
毎日わざわざ「私MTFです」ってネットで言い続ける必要、なくなるんですよね。

むしろ埋没して生活したい人からしたら、ずっとその話を続けること自体がリスクですらある。

私は色々更新してますけど、更新してることで「『MTF』ですって呪縛も自らかけているなー」といつも思います笑
更新が止まるのは、ある意味当然なんです。

なのに外からは、
「消えた=病んだ」
「更新しない=後悔した」
って短絡的に処理される。

いや、雑すぎるでしょと思う。

SNSから消えた人が、その後も普通に働いて、恋愛して、日常を生きてる可能性なんて普通にあります。
外から観測できなくなっただけで、その人の人生まで勝手に“失敗”認定しないでほしい。

実際、手術後にしんどくなる人はいると思う

ただし、ここで綺麗事だけ言う気はありません。

手術後にメンタルを崩す人は、たぶん普通にいる。
これは事実だと思います。

でも、それを
「ほら、やっぱり性転換なんてするからだ」
みたいな話に持っていくのは浅い。

本質はたぶんそこじゃない。

私が思うに、しんどくなる理由の一つは、
手術に“人生逆転”を期待しすぎること
です。

当事者って、本当に長い時間苦しんでるんですよ。
身体の違和感。
思春期の絶望。
男性ホルモンで勝手に進んでいく変化。
鏡を見るたびのしんどさ。
恋愛や人間関係の違和感。
社会の中での居づらさ。

そういうのを何年も抱えた末に、
「これが終われば少しは救われる」
「手術まで行ければやっと生きられる」
って思う。

思わないと頑張れないくらい、そこまでの道のりが重いから。

でも現実は残酷で、手術は確かに大きいけど、人生全部を救ってくれるわけじゃない。

ここに強烈な落差があるんです。

手術は“魔法”じゃない。マイナス100をゼロに戻す作業に近い

たぶんここ、当事者じゃない人にはかなり伝わりにくいです。

性別適合手術とか睾丸摘出とかって、外から見るとすごく大きなイベントに見えると思います。
「そこまでしたら、もう人生変わるでしょ」って。

でも感覚としては逆なんです。

手術はプラス100にしてくれるものじゃない。
マイナス100を、ようやくゼロ近くまで戻すためのもの。

これがかなり近い。

元からゼロ地点に立ってる人にはわかりにくいんですけど、こちらは最初からだいぶ不利な状態で人生が始まってる。
だから手術は“贅沢なアップグレード”じゃない。
“やっと普通に息ができる状態にするための修正”なんです。

性別違和が少し軽くなる。
男性ホルモンに怯えなくて済む。
身体に対するストレスが減る。
そこにはちゃんと意味がある。むしろかなり大きい。

でも、それで急に人生うまくいくわけじゃない。
急に恋愛がうまくいくわけでもない。
急に仕事が楽になるわけでもない。
急に過去の傷が消えるわけでもない。

ここを勘違いすると、術後にかなり精神的に落ちます。

「え、まだしんどいの?」
「ここまでやったのに、まだ生きづらいの?」
って。

でもそりゃそうなんです。
だって手術が消してくれるのは、人生の中の一部分だけだから。

手術後も、容赦なく“現実”は残る

これも大事です。

手術が終わった後、何が残るか。

ホルモン治療。
身体のメンテナンス。
ダイレーション。
通院。
お金。
体調の波。
周囲との関係。
声。
骨格。
肩幅。
身長。
喉仏。
顔立ち。
恋愛。
結婚。
就職。
カミングアウト問題。
バレるかもしれない不安。
“言うか言わないか”を考えるしんどさ。

こういうの、手術したら全部消えると思いますか。
消えません。

むしろ、手術が終わって「さあここから普通に生きるぞ」と思った時に、逆に重くのしかかってくることすらあります。

要するに、手術ってゴールじゃなくて、
“ようやくスタートラインに立つための通過点”
に近いんです。

でも世間はそれをゴールだと思ってる。
だからズレる。

「え、あんなに望んでた手術したのに、なんでまだ苦しいの?」
って。

いや、そもそもトランスの人生って、そんなに簡単じゃないんですよ。

私たちは“幸せになるため”というより、“死なないため”にそこまでやる

ここ、かなり本音です。

たまに外野から、
「そこまでして女になりたいの?」
「そこまでしても幸せになれないなら意味なくない?」
みたいに言われることがあります。

でも正直、その問い自体がズレてる。

こっちは別に、華やかな夢を叶えたくてやってるわけじゃない。
多くの場合、そうしないと本当に生きていけないからやってるんです。

性同一性障害って、外から見るより重いものだと思います
毎日じわじわ削られる。
見た目、身体、声、社会的立場、その全部が噛み合わない感じって、想像以上にしんどい。

だから治療する。
だから手術する。
だから戸籍を変える。

それは“人生を盛るため”じゃなくて、人生を最低限成立させるためです。

ここを理解せずに
「でも術後に病む人いるよね?」
って言われても、そりゃいるだろとしか言えない。

だって元々の難易度が高すぎるから。

結局、私たちの人生は“イージーモード”にはならない

かなり身も蓋もないことを言います。

手術しても、戸籍を変えても、人生はイージーモードにはなりません。

これが現実です。

最初から超ハードモードで始まったゲームが、
治療や手術で少しマシになることはある。
バグだらけで操作不能だったゲームが、なんとかプレイ可能になることはある。

でも、だからといって突然“普通の女の子として何も説明せずに生きられる人生”になるわけじゃない。

敵は相変わらず強い。
トラップも多い。
回復アイテムも少ない。
しかも周りには「え、何が大変なの?」って顔で見てくる人までいる。

だから私は思うんです。

ハードゲームは、どう頑張ってもハードゲームのまま。

これは悲観じゃなくて、認識の話です。

そしてこの認識がないと、手術後に心が折れやすい。
「ゴールしたはずなのに、なんでまだしんどいの」ってなるから。

でも本当は違う。
ゴールじゃない。
やっと“生きられる状態”に近づいただけ。
そこから先も、普通に戦いは続く。

ときには自分より重い障害の人を思い浮かべて「頑張ろう」と思うときもあります

 

「ほら、手術しても幸せになってないじゃん」
って言いたがる人。

こっちは別に、手術した瞬間にプリンセスになれると思ってやってるわけじゃない。
白馬の王子様が来るとも思ってない。
人生が全部整うとも思ってない。

ただ、少しでもマシに生きるために必死で選んでるんです。

マイナス100のまま生きるのが無理だから、ゼロまで持っていこうとしてる。
そのためにお金も時間も痛みも引き受けてる。

それを外から見て
「でもゼロって別に幸せじゃないよね?」
と言われても、
いや、マイナス100より遥かにマシなんだわ、という話なんですよ。

この感覚の違いはかなり大きい。

一番きついのは、「普通の女性として生まれたかった」という気持ちが消えないこと

ここはたぶん、多くのMTFが心のどこかに持ってるものだと思います。

もちろん、今の自分を否定したいわけじゃない。
今までの努力を無意味だと言いたいわけでもない。
でもそれでも、ふとした夜に思うんですよ。

最初から普通の女の子として生まれていたら、どんな人生だったんだろう。

どんな恋愛をしてたんだろう。
どんな学生時代だったんだろう。
どんな服を当たり前に着て、どんなふうに年齢を重ねてたんだろう。

この“どうやっても回収できないif”が、時々すごく重い。

しかもこれは、努力で埋まるものじゃない。
手術しても、戸籍を変えても、完全には埋まらない。

だからこそ、術後に一瞬気が抜けた時に、その空白がどっと来る人もいるんだと思います。

「自分は前よりマシになった」
それは本当。
でも同時に、
「それでも最初から欲しかった人生とは違う」
これもまた本当。

この二つは両立します。
両立するからしんどい。

だから「術後に鬱になる人がいる=それが答え」は違う

結局、私が言いたいのはここです。

術後にしんどくなる人がいる。
そういう人もいると思う
でもそれは、
“だから手術が間違い”
という意味ではない。

むしろ逆で、
そこまでしてもなお簡単にはならないほど、元々の人生の難易度が高い
という話なんです。

更新が止まったから不幸。
病んだから失敗。
発信してないから後悔。
そんな単純なものじゃない。

トランスの人生って、もっと複雑で、もっと泥臭くて、もっと切実です。

手術してよかった。
でもしんどい。
戸籍変更して救われた。
でも普通に辛い。
後悔はしてない。
でも、最初から普通の女性として生まれたかった気持ちは消えない。

こういう矛盾込みでリアルなんです。

SNSは白黒つけたがるけど、現実はそんなにわかりやすくない。

私たちは今日も、このハードモードをやるしかない

結局、今の人生をやるしかないんですよね。

生まれ直しはできない。
過去も消せない。
取り返せない時間もある。
“普通に人間として過ごしたかった人生”は戻ってこない。

それでも、今ある手札でやるしかない。

だから私は、手術や戸籍変更を「幸せ確定ボタン」だとは思っていません。
でも同時に、「あれがなければ今ここまで生きられなかった」とも思っています。

要するに、これは人生をキラキラさせるための魔法じゃない。生き延びるための装備なんです。

そして装備を整えても、ゲームの難易度は高いまま。
それでも前よりは戦える。
前よりは呼吸できる。
前よりは自分でいられる。

その意味は、めちゃくちゃ大きい。

だから外野に「それが答え」なんて簡単に言われたくない。
そんな薄っぺらい一言で片づけられるほど、こっちは軽い人生やってないので。

……とはいえ、正直に言うなら、思いますよ。

来世はもう少しイージーモードで頼む!!!!

切実に。
本当に。
せめて初期設定くらい優しめでお願いします。

でも今世は今世で、なんとかやるしかない。
泣きながらでも、休みながらでも、たまに笑いながらでも、このハードモードを攻略していくしかない。

同じように思ったことがある人、ぜひコメントやXで聞かせてください。
みなさんはこの人生、どうやって攻略していきますか?